最近巷で話題の「Bean to Bar」。Bean to Barとは、原料となるカカオ豆の香りや味を理解し、カカオ豆からチョコレートになるまでの全工程を一貫して作る「本物のチョコレート」のこと。今回はショコラ専攻＆フードビジネス専攻の1・2年生を対象に、フランス出身のパティシエでありチョコレートメーカーでもあるマッチュー・パンソンさんを講師に迎え、Bean to Barの概念を用いたチョコレートづくりの特別授業を行いました。（2016.7）

今回の特別授業の場所は、昨年誕生したショコラ専攻のスタートに合わせて新設されたチョコレートファクトリー。ドアを開けるなり頬を撫でるひんやりとした空気。溶けやすい性質のチョコレートを扱うため、室温は常に一定の温度に保たれています。ファクトリーの中には大きなコンチングマシーンをはじめ、Bean to Barに欠かせない様々な設備が所狭しとならんでいます。

今回講師を務めて頂くのは、パティシエでもありチョコレートメーカーとしても活躍するフランス人のマッチュー・パンソンさん。この春、中央区今泉にオープンしたBean to Barの専門店「green bean to bar CHOCOLATE」のメインチョコレートメーカーです。授業の前に、今一度Bean to Barの基礎知識と、この日の作業内容をご説明頂きました。

今回の授業は2部制で実施。初日は豆の選別・ロースティング（焙煎）・クラッキング（細かく粉砕）・ソーティング（豆の選別・大きさの均一化）・ウィノウィング（豆を細かく砕き外皮と内側のカカオニブスを分離）・グライディング（ペースト状にすり潰す）・メランジング＆コンチング（カカオニブと砂糖を合わせて挽き、なめらかな食感と風味を引き出す）というカカオ豆からチョコレート原型になるまでの作業を行いました。2日目となるこの日は、コンチングしたチョコレートを取り出し、成形までを一気に行います。

まず、コンチングしたチョコレートをテンパリングと呼ばれる作業で温度調整していきます。通常は機械でやる工程ですが、この日は特別に手で実施することに。45〜50℃に溶けたチョコレートをへらを使って混ぜ合わせながら、32℃まで温度を下げます。このテンパリングで温度調整することによって、チョコレートにツヤやなめらかな口溶けをもたらすんだそうです。

テンパリングが終わったら、次はモールディングという工程に。これはテンパリングをしたチョコレートがすぐ固まらないように、熱風で温めながら型に流し込む作業。これを冷やし固めるといよいよチョコレートが完成するというワケです。しぼり袋に溶けたチョコレートを入れ、ひとつひとつの型に均等に流し込みます。このモールディングの作業ですが、なるべく平らに仕上げなければならない上、分量も全て均等にしなければならないので、結構大変な作業なのです。

先生の手ほどきを受けながら学生たちも挑戦！慣れない手つきながらも、順調にモールディングを行う事ができました。そしてしばらく冷蔵庫で冷やし固めたチョコレートを、ひとつひとつ型から取り出すと…ジャジャーン！見事なBean to Barのチョコレートが完成致しました！学生からも「おお〜っ！」というどよめきが起こります。

ズラリとならんだできたてのチョコレート。実に壮観でございます！でもチョコレートを横から見てみると、モールディングの際にチョコレートが偏ってしまったため、厚みにバラつきがあるものもありました。先生から指摘を受けながら、ひとつひとつの作業をより完璧なものに仕上げるようにならなければなりませんね。

それではお待たせの試食タイム。初日の授業でロースティングの温度と時間を変えた3種類のチョコレートを試食してみることに。まずは香りをかいで、カカオ豆の持つフルーティーさを体感。次に少しづつかじりながら、口の中や舌の上に広がるフレーバーをゆっくりと堪能していきます。面白いのが同じボリビア産のカカオ豆を使用しているのに、ロースト温度や時間を変えるとチョコレートの風味や味も変わってくるという点。こうしていろんなロースト方法を試す事で、カカオ豆本来の持つ味わいを表現できる温度を探っていくんですね。

最後は講師を務めて頂いたマッチュー・パンソンさんと一緒に記念撮影。Bean to Barのチョコレートは見た目はただの板チョコに見えてしまいますが、完成に至るまでにはたくさんの工程が存在し、豆の選別から、チョコレートになるまでの工程をひとつひとつこだわることで、はじめて、カカオ本来の風味を生かしたチョコレートという領域に辿り着くことができるんです。実にBean to Barの奥深さを知る事ができた授業でした。マッチューさん、ありがとうございました！！